日進市竹の山どうぶつ病院では、異物の誤食に対して、トランサミンを使用しています。

病院案内 診療案内 専門診療 健康診断 スタッフブログ 求人案内

症例集

2019.02.07

異物誤食① 催吐処置について

「靴下食べちゃった」「ビニール食べちゃった」「チョコレート食べちゃった」

よくあります。

 

対処法は3つに大別されます。

①そのまま様子を見る(勝手に吐く、あるいは、便で出るのを待つ or 毒物なら点滴して希釈する)

②吐かせる

③麻酔をかけて摘出する(開腹手術 or 内視鏡)

獣医師の立場から言うと、③が最も安全かつ確実です。これははっきりしています。

ただ、③には全身麻酔が必要であり、費用も大きくなります。できれば①②で済ませたいという、飼主さんの希望は理解しています。

①②は運に左右されます。ある程度割り切って挑戦する、そんなイメージです。

 

以下の内容はすべてワンちゃんの話です。

猫さんは異物を食べる子が少ないため、オキシドール・トランサミンどちらの催吐処置のデータも恐らく存在しないと思います。

 

②異物を吐かせる処置=催吐処置について説明します。

動物病院で行われる催吐処置は2種類です。おそらく、使用率は半々程度だと思います。

a オキシドールを飲ませる 体重にもよりますが10mlくらい飲ませます。

b 止血剤(トランサミン)を急速に静脈内注射する。

a オキシドールを飲ませる

オキシドールは消毒に使う”アレ”です。特別なものではありません。

飲ませることにより、胃の中が泡泡になり、我慢しきれずに嘔吐します。

デメリットとして、嘔吐させた後に胃が荒れることが知られています。

嘔吐が長引く可能性があるので、うちではあまり実施しません。

 

b 止血剤(トランサミン)を急速に静脈内注射する。

本院ではこちらを採用しています。

血管内に留置針を装着し、急速に血管内に注入することで、副作用として嘔吐が誘発します。

嘔吐後はケロッとしています。1-2時間後には普通に食べることができます。

 

ただ、デメリットも理解してください。

本来の目的は止血剤です。嘔吐は副作用です。嘔吐の発生機序は不明とされています。

止血剤として通常使用する量は、5-25mg/kgです。一方、催吐処置に使用する場合は50mg/kgです。

催吐のためには通常の10倍量必要です。

 

2014年アニコム白書の記事の抜粋です。

50mg/kgで使用すると2/2(100%)嘔吐したが、20mg/kgでは1/10(10%)しか嘔吐しなかった、というデータです。

確実に嘔吐をさせるため、本院でも50mg/kgを基本として使います。

 

副作用としてはてんかん発作様が起こることがあるそうですが、本院では起きたことはありません。

運が良かっただけなのか、発作の発生率は極めて低いのか、どちらの可能性もあると思っています。

 

トランサミンによる催吐処置は、実際何も副作用がなく、高い確率で嘔吐が誘発できます。

注射後10分以内に2-3回嘔吐し、その後はケロっとしています。

経験的には安全です。ただ、その安全を裏打ちしてくれるデータはありません。

 

異物の大きさ、患者さんの健康状態等も踏まえ、②催吐処置は慎重に実施しています。

①何もしない、が逆に安全な場合もあると考えています。

2回目となりますが、③麻酔下の処置が最も安全です。

症例集一覧

2019.08.08
てんかん・認知症に効果があるドッグフード発売されました
2019.04.12
膀胱結石の溶解療法
2019.03.04
甲状腺機能低下症
2019.02.07
異物誤食① 催吐処置について
2019.02.01
ワンちゃんの去勢・避妊手術を受ける時期について② メスの避妊時期について